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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)792号 判決 1966年10月21日

上告人

西山儀平

右訴訟代理人

本庄修

被上告人

前田政太郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人本庄修の上告理由一ないし三について。

所論は、原審で主張なく従つて認定のない事実関係に基づいて、民法一条の法意を云々して、賃貸人たる被上告人は本件土地の賃借権譲渡について承諾を拒否できないことをいうものであつて、採用できない。従つて、右所論を前提として、原審が正当理由の存否の判断を遺脱したとする論旨も、採用できない。

同四について。

論旨は、賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡がなされた場合でも、賃貸人が賃貸借契約を解除しないかぎり、直接自分に賃貸借の目的物の引渡(明渡)を賃借権譲受人に請求することはできないと主張するが、右解除をしなくても賃貸人は譲受人に対し賃貸借の目的物の明渡を求めうることは、すでに当裁判所の判例(昭和二五年(オ)第一二五号同二六年五月三一日第一小法廷判決、民集五巻六号三五九頁)であつて、所論は採用できない。

同五について。

論旨は、右の場合賃貸借契約が解除されないかぎり、賃貸人は賃借人に対し賃料を請求しうるから何ら賃料相当の損害を生ぜす、従つて譲受人に対し不法占拠を理由として賃料相当の損害金の支払を請求することはできないと主張するが、賃貸人たる地主が借地人に対し賃料請求権を有するとしても、それだけではその間賃貸人たる地主に賃料相当の損害を生じないとはいい難く、借地人から右賃料の支払を受けた場合は格別、そうでないかぎり賃貸人たる地主は賃借権の無断譲受人たる土地占有者に対し賃料相当の損害金を請求できるものと解すべきことは、すでに当裁判所の判例(昭和三八年(オ)第一四六二号同三九年六月二六日第二小法廷判決、最高裁判所裁判集民事七四号三二七頁)であつて、被上告人が賃借人たる訴外松本からすでに賃料の支払を受けた等の特段の事情の主張立証のない本件としては、上告人に賃料相当の損害金の支払義務があるとした原審の判断に何ら違法はなく、所論は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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